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最後のマルマル

アニメ・ゲーム・声優などに関する我楽多雑文。研究者兼大学講師をやってます。

第1章 豊崎愛生の人物像とその魅力―「ふわふわ」なだけじゃない!―

※注)本稿は「声優雑誌に表出された「豊崎愛生」像」(仮題)の一部分を構成したものです。上記の「序章」を一読の上、本稿をご覧ください。

はじめに
 豊崎愛生の魅力とは何か――各個人によってその評価が多種多様であることは言うまでもない。本稿では、筆者の主観で豊崎の魅力を語るのではなく、あくまで「声優雑誌から浮き彫りになる豊崎愛生の魅力」について論じていく。その際、本稿では特に「豊崎愛生の人物像」に注目したい。声優雑誌誌上において、豊崎愛生の魅力そのものについて言及している記事は少ないため(※1)、人物像から魅力を浮き彫りにするという段階的手法を取らざるをえない。

1.豊崎愛生のイメージ―「平仮名」や「ふわふわ」などの擬音が似合うパーソナル性―
 ここでは、「外見」「役柄・声質」「口癖」など、多角的視点から「豊崎愛生のイメージ」を明らかにしていく。
・外見
 人間のファーストインプレッションに外見が大きな割合を占めることは、言をまたないが、それは豊崎愛生の印象(イメージ)においても同様であろう。声優雑誌には、当然多くの豊崎(及びスフィア)のグラビア写真が掲載されており、それらを「見て」形成される豊崎愛生像が第一に考えられる。むしろ、インタビュー記事などの文字を「読んで」形成されるイメージ像よりも、直接的な視覚情報として印象は強い。
 そして、その豊崎の外見から抱くイメージは、「ふわふわ」「ほわ~ん」といった柔和なイメージであろう。これには、豊崎の服装などが大きな要因を占めていると考えられる。スフィアの高垣彩陽が「愛生ちゃんって、ふわっとした森ガールっぽいお洋服が多い(※2)」と指摘しているように、服装から「ふわっとした」印象を受ける読者も少なくないと考えられる。しかしながら、人によっては、全くそのような印象を受けない場合も考えられるため、断言は避けるべきであろう。
 一方で、以上のようなイメージは、豊崎本人自身も認識しているようである。スフィア1stシングルのジャケット撮影での写真を見て「私、こうやって写真を見ると、思ってたよりボ~ってしてるな(※3)」と述べていることから、周りからの一方的な評価だと一概に切り捨てることもできない。
 その他、豊崎の「動作」などからも、以上のような擬音の似合うイメージを読み取ることができる。例えば、豊崎のダンスについて、高垣が「愛生ちゃん(豊崎)は…ふわふわした動き?」と述べ、豊崎が「フフッ。ボンヤリしてる(笑)」と返答している記事などが見られている(※4)。

・役柄
 声優が演じるアニメキャラクターのイメージというものも、声優本人のイメージに大きな影響を与えるものである。また、声優によっては、その声質から雰囲気や性格が類似したキャラクターを連続して演じることも多い。
 豊崎も自身が演じたキャラクターについて「〔とある科学の超電磁砲初春飾利は〕ほんわかしているタイプ(※5)」、「ふわふわイメージのけーな〔うしろの席の大魔王の登場人物〕を魅力的に演じていけたらいいなって思います。(※6)」と、「ほんわか」「ふわふわ」といった柔和な擬音を用いて表現しており、「天然っぽい女の子を演じさせていただく機会はけっこうある(※7)」と自身の演じるキャラクターの類似性も認識している。豊崎は自身の声を「“まろみ”がある(※8)」と評価しており、その言葉通りの配役であることがうかがえる。
 また、豊崎が演じるキャラクターのイメージが、豊崎本人と似ているという点も誌上からうかがえる。「けいおん!」(「けいおん!!」)の登場人物である平沢唯と豊崎について、秋山澪役の日笠陽子は「唯と愛生ちゃんはそっくり(笑)。二人とも柔らかい雰囲気で、なんでも受け入れてくれそうな温かさがある(※9)」と述べており、豊崎本人も「キャラと性格がリンクすることもあって、私はやっぱり「マイペース」って言われて(笑)。〔中略〕もともとすごく楽観主義なので、ライブの準備などでみんなが「うわー、どうしよう?」ってなっていても、「大丈夫、大丈夫~」って言ってたら、「唯みたいだね」って(笑)(※10)」と述べており、平沢唯の「柔らかい雰囲気」が、演者である豊崎とリンクしていることが読み取れるのである。
 「けいおん」の影響力や、「けいおん」の平沢唯は知っていても、豊崎愛生という声優自体は名前程度しか認識していない視聴者においては、以上のような役柄のイメージの影響力が強いと考えられる。そして、キャラクターから興味を持って、豊崎愛生のグラビア写真やラジオ、ブログなどにふれた場合、キャラクターと豊崎の第一印象に大きな差異がないため、そのキャラクターに対する愛情が、そのまま声優本人への愛情に転化することも比較的容易であるということが指摘できよう。

・口癖
 口癖などにも、その人物のキャラクター性が反映されていると考えられる。豊崎は、誌上の「ついやってしまうクセは?」という質問に対して「やたらと擬音語をもらす。「よ~いしょッ」「ぽよ~ん」とか。(※11)」と述べている。
 ここで注目したいのが、単語や語尾などに使われる「~」(波形)である。誌上の豊崎の発言を見ると、上記の引用資料中にも既に見られているように、「~」が多用されており、豊崎の柔和なイメージを表す重要な記号であることがわかる(※12)。
また、「~」は平仮名と組み合わせて使用されることが多いことにも注目したい。豊崎は自身のイメージついて以下のようにも述べている。

「今まで、私のイメージはひらがなっぽいと周りから言われて、自分でもそう思っていた」(『声優グランプリ』2011年5月、28頁)

 以上、様々な視点から、豊崎愛生のイメージの一端を見てきたが、平仮名や擬音が似合う柔和なイメージであることが、特筆すべき豊崎愛生の特性として浮かび上がっている。

2.他者の豊崎愛生
 以上の豊崎愛生に対するイメージ・評価は、第三者の書いた記事などにも如実に表れている。
 声優雑誌の記事には、声優や関連ユニットに対して直接行うインタビュー記事だけでなく、ライブなどに関するレポート記事も存在している(「豊崎愛生関連記事目録」参照)。そのレポート記事は、雑誌の編者・記者が書いたものであり、そこでの豊崎愛生に対する評価は、その編者・記者が抱く豊崎愛生像であるといえる。以下、該当部分を引用列挙する。

≪2010年1月10日のスフィアColorfulConcert(東京・渋谷)のレポ≫
「豊崎も昨秋にリリースしたソロデビュー曲「loveyourlife」で“ほんわか”とした独特の雰囲気をかもしだす」(『声優アニメディア』2010年2月、40~41頁)

≪2011年1月29日の豊崎愛生ソロイベント(東京・中野サンプラザ)のレポ≫
「まるで、散歩するような足取りで、豊崎さんが登場した。ゆったり、ほんわか。愛生ちゃんらしく、ライブがスタート。」「MCでのおしゃべりの声とテンポも含め、独特のセンスに彩られた今回のライブ。」(『声優グランプリ』2011年3月、17頁)
(※13)

 「ほんわか」「ゆったり」などの語句が見られ、上記で見てきた豊崎愛生像を再確認することができる一方で、「独特」という表現を見過ごしてはならないだろう。独特という表現の中に、「ほんわか」「ゆったり」といったイメージが内包されていることは間違いないが、それ以上に含みのある表現であるという印象を受ける。「独特」という評価については、再検討の必要性がある(後述)。
 また、その他の第三者の評価を知る記事として、各声優雑誌で設けられている「読者投稿欄」などがあげられる。その中には、以下のように豊崎愛生について書かれた読者投稿文も見られるのである。

≪私の王子様&お姫様≫
「私のお姫様は豊崎愛生さんです。同性ですが、あのほっこりボイスはいつ聴いても癒されます。憧れの素敵女子です。」(埼玉県・ゆりにゃんさん)
(『声優アニメディア』2011年5月「声アニチャンネル(読者投稿)」75頁)


 「ほっこり」といった表現が見られる他、「癒し」という評価にも注目したい。豊崎愛生像を語る上で、「癒し」という評価も重要な構成要素である。

3.スフィアメンバー豊崎愛生
 豊崎愛生像を語る上で忘れてはならないのが、豊崎と近い立場におり、共有している時間も長いスフィアメンバー豊崎愛生観である。以下、各メンバーが、豊崎愛生について語っている該当部分を引用列挙する。

高垣彩陽
「高垣 愛生ちゃんはすごくふわっとした癒しオーラがでてるんだけどいろんなことに精通していて物事を俯瞰で見てくれている感じ。」
(『ボイスニュータイプ』2009年6月、110頁)
「高垣 独特のリズム感とかムードがあるし、みんなを上手に纏めてくれるんですよ。助けられることが多いですね」
(『ピックアップヴォイス』2009年6月、33頁)
「彩陽「頭の回転がすごく早い。しかも、愛生ちゃんしか持ってない空気感というか、愛生ちゃんだからこそっていうものがたくさんあるなぁと思います
(『ピックアップボイス』2010年1月、36頁)
「高垣「でも、その『ほわ~ん』もただぼーっとしてるのとは全然違って、愛生ちゃんはすごく空気が読めるんです。率先して場を和ませてくれたりとか、声を掛けてくれたりとか、去年は愛生ちゃんの優しさに助けられました」
(『ボイスガールズ』2010年2月、45頁)


寿美菜子
「〔寿〕で、愛生ちゃん(豊崎)はホワンとしつつ、いつも全体を俯瞰で見てる。」
(『声優グランプリ』2009年4月、32頁)
「寿 場を仕切るのが上手いから、イベントで困ったときは、「愛生ちゃ~ん」って頼っちゃう(笑)。」
(『ボイスニュータイプ』2009年6月、110頁)
「寿 メンバーの中では頭の回転が一番早いと思います」
(『ピックアップヴォイス』2009年6月、33頁)
「美菜子「(笑)愛生ちゃんは、私たちをうまいことまとめてくれたり、率先して引っ張ってってくれたりします。普段のおっとりした雰囲気の中でも、一度こうしようと思ったら引っ張っていってくれる、お姉さんみたいな部分があります」
(『ピックアップボイス』2010年1月、36頁)
「寿『ほわ~ん』とした雰囲気は誰にも真似できないと思います」
(『ボイスガールズ』2010年2月、45頁)


戸松遥
「戸松 愛生ちゃんは、私たちにとって癒しですね。普段は「ほっ?」とか言っててフワフワしていますけど(笑)、すごく冷静に私たちのことを見てくれていて。」
(『ピックアップヴォイス』2009年6月、33頁)
「遥「いい意味で、すごく空気が読めるんです。その状況で自分がどういう立場にまわればいいのか、どういう風に動いたらいいのかをとっさに考えられるんだなって思います」
(『ピックアップボイス』2010年1月、36頁)
「戸松『柔らかいテッシュ』みたいな感じです」
(『ボイスガールズ』2010年2月、45頁)


 上記で見てきたような「ふわっとした癒しオーラ」「癒し」「フワフワ」「おっとりした雰囲気」「ほわ~んとした雰囲気」などの一面的な評価だけでなく、「全体を俯瞰で見る」「いろんなことに精通している」「場を仕切るのが上手い」「冷静」「頭の回転が早い」「みんなを上手に纏める」「お姉さんみたいな部分」「空気が読める」などの、別の評価が見られることに注目したい。見た目や声などから第一次的に受容する「ふわふわ」などの擬音が似合う柔和なイメージだけでないことが、スフィアメンバーから語られているのである。豊崎愛生に近しい立場にいるスフィアメンバーならではの豊崎愛生像であるといえよう。
 そして、「ふわふわ」「癒し」以外の豊崎愛生像は、各声優雑誌を突き合わせて詳細に見ていくことで実証的把握が可能となる。

4.豊崎愛生の別イメージ
(1)見聞の広さ
 前掲の「いろんなことに精通していて物事を俯瞰で見てくれている」などの評価は、豊崎の見聞の広さから、常に客観的に、広い視野で見ることができている、という評価に他ならない。
 豊崎の見聞の広さは、豊崎の「好きなもの」の多さなどに如実に表れている。これについては、別ページの「豊崎愛生のパーソナルメモ」を参照されたい。豊崎が、様々なものに興味関心を持っており「いろんなことに精通している」という実証的裏付けにもなるだろう。日頃から、常にアンテナを張り巡らせていることは、声優という職業に限らずどんな仕事においても重要なことといえる。

(2)芯の強さ―堅実でしっかり者―
 そして、各声優雑誌のインタビュー記事を読んで、感じることは、豊崎愛生の「芯の強さ」である。声優という職業に対する確固たる信念など、自身の意見というものを強く持っている印象を受ける(これについては別稿で詳述する)。
 また、「ふわふわ」なイメージとは違った、堅実なイメージも誌面からうかがうことができる。以下、筆者が堅実な印象を受けた豊崎のインタビュー記事を例にあげる。

≪〔記者の質問〕「声優として、何か将来の目標みたいなものはありますか」≫
「私は今、こういうお芝居がしたいとか、あの人みたいになりたいとか、痩せたいとか(笑)、「なりたい自分」はいっぱい思いつくんですけど、突然何かが起こるというよりは、自分が気づかない間にじわじわと変わっていくのかなと思ってるんです。理想を思い描くことも大事ですけど、今できることから始めることで自分の夢がさらに広がっていくような気がします。道に咲いている花だったり、両親の言葉だったり、そういった身近なものから学ぶことが多いし、これからもそういうものを大事にしていきたいなと思います。」
(『ボイスニュータイプ』2010年3月、33頁)


≪毎日の意識≫
「日々をふわふわと過ごしてしまうだけではなくて、今日が明日に繋がるように、毎日を大切に、ということを意識していきたいです」
「〔ライブ終演後、作品の最終回後〕そんな日も、家に帰ったらまた次の日のビデオチェックやオーディションの準備をする。」
(『ボイスニュータイプ』2011年3月、40頁)


 以上の記事から、豊崎愛生のしっかりとした人間性がうかがえる。「ふわふわ」「おっとり」「ほわ~ん」などのイメージは、柔和という肯定的印象とともに、得てして「だらしがない」「脳天気」などの否定的印象も同時に想起してしまうものであるが、声優雑誌のインタビューでは、その負の側面を見事に払拭している。「ふわふわ」というイメージとともに、「全体を俯瞰で見られる」見聞の広さや、堅実な部分も併せ持つという、まさにスフィアメンバーが語ったような豊崎愛生像が浮かび上がってくるのである。前述した、各声優雑誌の記者が使用した「独特」という評価も、「ふわふわ」なだけではない、豊崎愛生という人間が醸し出す魅力を包括した表現であったと考えることもできるのではないだろうか。
 しかしながら、この豊崎愛生の二面性を、文字に残る形で的確に指摘しているのは、管見の限りで『ボイスニュータイプ』だけである(※14)。豊崎愛生のソロシングルに関する文脈上で『ボイスニュータイプ』の記者が「愛生ちゃんって表面ふわふわですけど、芯は強いですね」と述べており、豊崎も「どうやらけっこう頑固みたいです(笑)。」と肯定している。豊崎はこれに続けて「私は歌が決して得意ではないんですけど、でも好きなことを今やらせてもらっているのには自信を持ちたいし、「私はこれが好きなんです」って気持ちには何も間違いがないから、そこは疑わず、のんびり歌ってます。」と、芯の強さを覗かせる受け答えをしている。
 余談ではあるが、豊崎愛生のしっかりとした性格は、CDなどの宣伝にも表れている。例えば、クリスマスの予定について聞かれた際に「あと09年のクリスマスは、やっぱり私たちのアルバムを聴いて過ごしたいよね。(※15)」と付け加えていたり、スフィアの「MOONSIGNAL」のミュージッククリップの見所として愛の告白をする顔があると述べた際に「そのシーンは今回の見せ場だと思ってるんですけど、それが出てくるのは最後のほうだから、見たい方はぜひシングルを買っていただければと(笑)(※16)」と綺麗に宣伝を入れてくる手際の良さは、スフィアメンバーが述べていた「頭の回転の速さ」や「場をうまく纏める」能力の一端として捉えることができるのではないだろうか。

(3)負の側面
 前述で「負の側面」という表現を使用したが、豊崎愛生の魅力を語る上で「負の側面」もやはり重要な要素を占める。というのも、豊崎愛生個人のソロ活動に関しては「負の側面」を隠すことなく表に出しているのである。これが、大衆的存在である声優として正しい姿勢かどうかは議論が分かれるところであるが、一個人の魅力として無視することはできない。
 特に、有名だと思われるのが、豊崎愛生ソロシングル第二弾である「ぼくを探して」(2010年5月)であろう。この「負の感情」をテーマとした2ndソロシングルについて、豊崎は多くの声優雑誌誌上で以下のように述べている。

「やはり私も陽の部分だけでなく、陰の部分もあるので、そういうマイナスな部分を押し出して歌ったのは初めてかもしれません。誰もがもっている感情ですし。〔中略〕内にある叫びをそのまま出した感覚。なので、そういう私の気持ちに親近感を抱いていただけたらうれしいです!」「表現したいことや方向性は全部違いますね。〔中略〕包み隠さずネガティブな部分も出していますが、こんな私も私なのでよろしくお願いします!」(『声優グランプリ』2010年5月、13頁)

「実は今回のシングルでは、人間の“負”の感情を歌ってみたいということを事前にCHARAさんにお伝えしていたんです」
「人間誰しも、ネガティブな気持ちになる時って、必ずあると思うんです。もちろんそれは私にもあるんですが、普段のお仕事の中では、そうした感情を誰かに伝える機会ってあまりないですよね。で、このもどかしさを歌で伝えることはできないかなと思ったのが、きっかけです。」
「これだけしっかりと“負の感情”を表現するのは初めての経験ですからね。ファンの皆さんがどう受け止めてくれるのか。不安でもあり、楽しみでもあります」
(『声優アニメディア』2010年5月、27頁)


「私も人間なので落ち込んだりとか悩んだりとか、あまり綺麗じゃない感情も当然たくさん持ってます。そういうネガティブな感情が表現された曲やマイナーな曲をよく聴くというのもあるんですけど、私もちゃんと歌っていきたいな、と。」「暗い曲でも優しく染み入っていくような曲になればいいなって」
(『ボイスガールズ』2010年5月、27頁)


 自分が「負の感情」を持っているという吐露により、豊崎愛生というパーソナルの強調が垣間見れる。詳しくは、別稿で論ずるが、スフィアの一員としてインタビューを受けている時には見られない、自己主張性がソロ活動時には見られている(第二章参照)。ソロとスフィアの時のギャップもまた豊崎愛生の魅力の一つであることは、豊崎愛生のシングル購入層なら言わずもがなであろう。自分に対して「負の側面」を晒してくれる、弱い部分を見せてくれるという行為には、一層の親近感を抱かせる効果があると考えられる。この「負の側面」の吐露は、豊崎が意識的に行ったパフォーマンス的行為なのか、或いは事務所の戦略なのか、はたまた豊崎の本心なのかは、当の本人以外には神のみぞ知る世界であるが、豊崎愛生像を構成する一要素として、これからも重要なキーワードになりそうである。
 また、彼女の負の感情は2ndシングルを契機に、急に表れだしたわけではない。例えば、『声優アニメディア』の「あきずかん(豊崎が好きなものを毎回テーマごとに語るコラム)」では、「物語的にはすごく悲しい内容なんですけど、私そういうお話が好きで、『人魚姫』のほかにも『眠り姫』や『ラプンツェル』が好きだったりします。(※17)」というように豊崎の嗜好と負の感情の密接性が、2ndソロシングル発売前に確認することができるし、幼稚園の時に「シュルレアリズムみたいな黒一色の怖~い絵を描いてた(※18)」というような、今〔2ndソロシングル〕に繋がる幼少時の「負の側面」の一端も誌面上で吐露している。彼女の負の感情の表出は、ソロシングル発売に際して恣意的行われわけではなく(宣伝という要素が多少あったにせよ)、また、捏造的豊崎愛生像というわけでもなく、前述した豊崎の堅実な側面からも、ありのままの彼女の一部であると捉えて問題はなさそうである。そして、そのような感情を吐露するという行為自体も彼女の個性といえるのではないだろうか(※19)。
自身の負の側面を吐露している興味深い記事が『ボイスガールズ』VOL.02(2010年5月)に見られている。そこで豊崎は自身が「コンプレックスの塊」であり、そのコンプレックスが声優を目指したきっかけであると述懐している。

「コンプレックスの塊ですから(笑)。昔はすごく泣き虫だったんですよ。“泣き虫あーちゃん”なんてあだ名があったくらいで、“一回に何度泣くんだ”みたいな(笑)。しゃべれなくて泣いちゃって、泣いちゃうとまたしゃべれなくて。そんな悪循環がありました。〔中略〕人前に出るのも苦手だし、カメラも苦手だったんですけど、どうしても変えたかった」(『ボイスガールズ』2010年5月、27頁)

おわりに
 以上、豊崎愛生の魅力について、主に声優雑誌誌上に表出された豊崎愛生像から検討を行ってきた。本稿で結論として強調しておきたいことは、副題にもある通り「豊崎愛生はふわふわなイメージだけじゃない!」という一点に尽きる。見聞の広さ、芯の強さ、負の側面など、豊崎愛生は人間的魅力に満ちているのである。斯く言う筆者も、「けいおん!」の平沢唯のイメージを持って豊崎愛生像を形成していた人間の一人であったため、本稿の検討を通じて、豊崎愛生のイメージが一変した。如何に記事を読み流し、グラビアばかりに目がいっていたのかがわかる。声優雑誌のインタビュー記事から、一定の限界はあるものの、個人の人物像を浮き彫りにできたことは一定の成果であり、声優雑誌に資料的価値を与える一助にもなったのではないだろうか。声優を学術的に研究する上での試金石として評価して頂けたのなら重畳である。
 また、豊崎愛生を知る人々は本稿を読んでどのような感想を抱いたのであろうか。あくまで「声優雑誌に表出された豊崎愛生像である」と限定した上での検討ではあるものの、現実に於いて実際に豊崎愛生を応援している人々の「豊崎愛生像」との乖離具合については些かの不安が残る。デビュー直後から豊崎を知り、応援している人々にとっては周知の豊崎像であったのか、あるいは全く的の外れた豊崎像だったのか。この点については、多くの方のご批判ご助言を待ちたい。

≪註≫
(※1)声優雑誌の記事は、その多くがインタビュー形式であるため(「豊崎愛生関連記事目録」参照)、豊崎本人が受け答えしている。自分の魅力について自ら述べるというようなことは、むしろ悪印象を与えるため、良識として行われないのが一般である。
(※2)『声優グランプリ』第16巻第1号(2010年12月)19頁。スフィア間で、洋服をコーディネートするという企画上での発言。
(※3)『声優アニメディア』第6巻第5号(2009年5月)67頁。
(※4)『声優グランプリ』第14巻第5号(2009年5月)38頁。スフィア1stシングル「FutureStream」でのダンスについて。
(※5)『声優グランプリ』第15巻第1号(2009年12月)76頁
(※6)『声優グランプリ』第15巻第5号(2010年4月)28頁。
(※7)『声優アニメディア』第7巻第4号(2010年3月)58頁。
(※8)『声優アニメディア』第7巻第5号(2010年4月)13頁。
(※9)『声優アニメディア』第6巻第5号(2009年5月)44頁。
(※10)『ボイスニュータイプ』No.40(2011年3月)40頁。
(※11)『声優グランプリ』第15巻第6号(2010年5月)9頁
(※12)『声優グランプリ』第15巻第3号(2010年2月)、「ブラックコーヒーに甘~いマシュマロをうかべてもうまし!!」(100頁)、『同』第15巻第5号(同年4月)、「スフィアが歌を歌うユニットとしてちゃんと機能できるようになったんだな~と感じるし」(25頁)など、枚挙に遑がない。
(※13)その他、2010年11月スフィア武道館公演のレポートの「ガーリーな世界が印象的な「loveyourlife」(豊崎)」など(『声優パラダイス』vol.03(2011年3月)33頁)。
(※14)『ボイスニュータイプ』No.39(2010年12月)30頁。
(※15)『声優グランプリ』第15巻第1号(2009年12月)23頁
(※16)『声優アニメディア』第7巻第11号(2010年10月)37頁。
(※17)『声優アニメディア』第7巻第3号(2010年2月)119頁。
(※18)『ボイスニュータイプ』No.40(2011年3月)40頁。
(※19) ここで、読者の皆様に想起して頂きたいのは、某声優さんとの不仲が取り沙汰された某アニメの特典映像である。豊崎も「負の側面」を有した人間であるという前提のもと、これを見るのと、前提のないままこれを見るのとでは受ける印象は違うのではないだろうか。

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